モーラー奏法 その原理とは

 サンフォード・ A ・モーラー(アメリカ1879~1961)が1920年台初頭に体系化し、発表した奏法です。

 この奏法は元々南北戦争の経験者であり軍人であるジョージ・B・ブルースが、1862年にアメリカ軍の為に考案した、スネアドラム用の奏法原理をベースに、後にモーラー自身が体系化したもの、とモーラーブックには記載されており、実は本人が考案したものではない事が解ります。

 モーラーはある時、古いスタイルのドラム奏法に興味を持ち、南北戦争を生き延びた軍楽隊の鼓手を捜し歩きました。そして何故どのように演奏していたかを研究し始め、ある原理に気づきます。

その奏法原理とは、腕の「回転、ねじり」でドラムを叩くというものでした。

 戦時中の軍楽隊鼓手達が、一体何故このような叩き方をしたのか。理由は「戦地における信号伝達、指示」にありました。戦場において銃器や大砲等の爆音に埋もれず、かつ鼓手が長時間の演奏にも耐えうるように、と考えられた方法が、回転の運用による奏法だった訳です。

 では早速この奏法の原理について詳しく説明致しましょう。国内では通常、スティックを構えた所から(写真A)、体側に腕を縮めつつチップを振り上げ(写真B)、そこから押すように叩く(写真C)、というのが一般的とされている「基本ストローク」ですが、アメリカで生まれたモーラー奏法には、このような動きはありません。

         
写真A                      写真B                      写真C 

       通常は構えて・・              身体側に腕を引き寄せ           前に押し出すように叩きます 


 モーラー奏法での「基本ストローク」は、まず構えたところから(写真D)、肘(上腕部)を体側から離すように持ち上げ(写真E)、続いて前腕部を回旋させ、胴体に戻って来た時にショットします(写真F)。

           写真D                       写真E                     写真F

    モーラー奏法では構えた所から      脇を開けるようにして振り上げ      身体側に戻ってきた所でショットします

 または持ち上げる(上腕、肘の開きと連動して)際に前腕を回旋させ、ショットします。これにより直線的な(屈伸の動き)ではなく、回転の動きになり、肩関節の回転力や腕全体の重さを有効に使えるという効果が生まれる訳ですね。

 さて、ここで肘を持ち上げる時に、上腕部、肩をねじる動きになり、それらをねじり戻すように演奏していきますが、人体の構造上、必然的に腕の付け根である肩甲骨が開く(スライドする)様な動きになる、という事を注意して下さい。

 しかし残念ながら「伝統的なモーラー奏法」ではそれらを明確に解説しておりませんでしたので、形だけを真似してしまうと、非常に不自然な動きになってしまいます。そのあたりは特に注意が必要ですね。

 それから肩甲骨を意識しようとすると、これも必然的に胴体の後ろ側である背中を意識する事になります。この感覚が出てくると腕が「今まで以上に長く感じたり」、「腕の質量をより感じるように」なってきます。

 例えば中国系武術などでは「含胸抜背」(がんきょうばつぱい)」と称され基本とされているフォームがよく出てきますが、とても参考になります。胸をはらずに背中に気を通す事と説いている方もいますが、「気」となるとなにやら怪しく(?)感じるので、ここでは「感覚」と捉えた方が良いと思います。

 併せて、手腕を動かす動作は「胴体や背骨や骨盤も反応している事」にも是非是非注目して下さい。胴体を固定し、手先だけで演奏をすることがいかに大変な事か、身をもって実感してもらえるかと思います。

 奏法原理をまとめると、チップを体側に近づけ、そして前方に振り下げショットする、という直線的な奏法に対し、腕(前腕上腕)や肩をねじるように振り上げ、(先に体幹部を反応させ)そして斜め方向から振り下ろすモーラー奏法では、その原理が全く異なるということになりますね。そこを是非注意して練習してください。

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