「米・中」2大強国とどう向きあうか? 
− 21世紀の国際政治と日本−
2009年3月10日

世界の景気は混迷の度を深めている。アメリカでは、世界最大の金融グループであるシティバンクと米国保険最大手のAIGの経営危機が進行し、政府による支援強化が決定された。英国でも、最大手金融機関のロイヤルスコットランド銀行が、国家の管理下に入ったのである。

これは、昨年9月に発生したリーマン・ショックが、世界中の実態経済に負の連鎖をもたらしている結果である。事実、2008年第4四半期の世界各国のGDP(国内総生産)成長率は、実にショッキングな数字を示していた。予想を遥かに上回るマイナス成長に転じていたのだ。

米国(マイナス6.2%)、EU(マイナス5.7%)とも大きな落ち込みあったが、日本のそれは年率換算でマイナス12.7%という驚くべき数字であった。そのため、日経平均株価は、バブル崩壊後の最安値近辺を低迷している。アメリカの株価も、3月2日には遂に7千ドルの大台を割り込んだのである。唯一の例外が中国である。6.8%と、何とかプラス圏で頑張っている。

世界的な規模で景気の混迷が続く中、オバマ新政権は世界秩序の再構築に向け、機敏な動きを開始した。アメリカ外交の主役を担うのは、オバマ氏と最後まで大統領の座を争ったヒラリー・クリントン氏である。そのヒラリー国務相が選んだ訪問先の筆頭が日本である。

各メディアが報じているとおり、ヒラリー氏の今回のアジア歴訪には、多くの意図がこめられている。彼女は、日本−インドネシア−韓国−中国という外交ルートを選択したが、最も重きを置いたのが、中国との会話であったことは間違いがない。一方、彼女の日本訪問の真の狙いも、麻生首相との会談ではなく、小沢民主党党首との会談であったと思われるのである。


ヒラリー・小沢会談( 「YAFOOジャパン・ブログ」より )

「21世紀はアジアの時代」と言われている。そのアジアの「盟主」の座を狙っているのが間違いなく中国である。21世紀の国際政治を考える上で、中国の今後をどう考えるのか?超巨大国家に成長しようとしている中国の現状をながめながら、日本の立ち位置を考えてみたい。


圧倒的な存在感を示す中国経済

先ず、次のグラフを見て頂きたい。日本と中国の米国債の保有残高の推移を示したものである。
米国債の保有残高で、遂に中国は日本を追い抜き、米国の最大の債権国となったのだ。


米国債保有残高推移(「東京財団」ホームページより)

1929年に発生した「世界大恐慌」以来といわれる経済危機を乗り切るため、オバマ政権は今後数百兆円規模の財政出動を覚悟している。その原資は、巨額な国債の発行である。ヒラリー氏が、最初の訪問国として日本と中国を選び、米国債の変わらぬ保有維持を依頼した背景である。

その中国が、世界中が未曾有の景気後退に苦しむなか、圧倒的にその存在感を高めようとしている。昨年11月に、各国に先駆けて打ち出した財政出動額は4兆元(約54兆円)と、巨額なものであった。この国の雇用を維持するためには、どうしても8%以上の経済成長率が必要だという。

今年に入ると、その財政出動の効果が早速出始めているというニュースが伝わってきた。
昨年大地震があった四川省では、「春節」(1月末からの旧正月)前に、高速道路が一挙に5本も着工されたそうである。地方政府からは、四川省に遅れをとるまいとする動きが急だという。

GPSを搭載した建設機械の動きを観測している大手建機社によると、「欧州でも米国でもピクリともしないが、中国ではワサワサと動き回りだした」という。(「週刊東洋経済」、2月28日特大号より)
また、春節では、高額な家電製品を中心に、個人消費が異常なまでの活況を呈していたという。

中国は、日本円にして7兆円以上の減税を行うほか、新たな景気対策を検討中、とも報じられている。中国のGDPは、現在世界第3位であるが、今の勢いでは、2010年には日本を抜き、2035年には米国を抜くとの推測がなされている。それでは、ここで、興味深い歴史的事実を紹介しよう。

世界大恐慌が発生した1929年の工業生産額を100とし、1932年の値を追ってみた。すると、米国が54、イギリスが84だったのに対し、ソ連は183と大躍進をしていたのだ。恐慌時にあっては、野党が存在しない独裁国家は強い。今度は共産国家・中国が世界の超大国に躍進しそうである。


軍事大国化する中国

軍事力についても、中国は急速に増強を進めており、何れ米国に肩を並べる軍事超大国に成長しそうである。中国がつい最近発表した2009年度国防予算によれば、金額は4、806億元(約6兆円)、前年度実績比14.9%という内容であった。21年連続で2桁の伸びを続くことになる。

一方、米国防省の発表した「中国の軍事力」によれば、中国が発表する軍事費は意図的に低く抑えられているという。実際には、発表の3倍近い巨費が毎年投じられているというのだ。また、中国元の為替レートも実勢よりは低い水準に置かれているため、この額はさらに膨らむはずである。

公表されている統計ベースでみても、210万人の兵員、860隻117万トンの艦隊、約3、000機の航空機は、間違いなく世界第二位の軍事力に達している。一方、軍備の量の面よりも脅威なのが、装備の近代化と攻撃力の増大という質への投資である。まず下の写真を見ていただきたい。


中国が建造予定の空母予想図( ysaki777.iza.ne.jpより )

中国が構想している最新鋭空母の予想図である。日本では、あまり報じられていないが、中国は20年以上も前から世界各国の空母を購入しては解体して研究を続け、空母の製作能力を高めてきたのだ。来年にも9万トンクラスの巨大核推進空母の建造に入るものと見られている。

元東海艦隊司令官の趙国鈞氏は、去る3日、「空母は遅かれ早かれ造る。中国は強大な海軍を建設し、遠洋に出なくてはいけない」と、記者団に語っている(3月5日、日経朝刊より)。中国が海軍の増強を急ぐ理由は、「台湾攻略や米国との競合以外に、日本との尖閣列島の領有権紛争や東シナ海でのガス田開発を巡る権益争いの軍事的解決がある」と米国防省は見ているのである。

日本から見て、全く看過できない事態の推移であるが、中国の軍備の増強は、さらに多方面に及んでいる。海軍関係では、最新鋭イージス艦や戦略核潜水艦の建造と配備が挙げられる。全て、自前の技術での建造計画である。また、米国本土に届く大陸間弾道ミサイルを増強させると同時に、宇宙衛星破壊実験を成功させるなど、宇宙戦争の分野でも最先端の動きをしているのだ。

これらの動きは、軍事力で米国と真っ向から対峙しようとする中国の決意の現れである。サブプライム・ショックによって米国の地位が揺らぐ中、中国はかつてのソ連の立場に浮上を始めている。


「米国軍は第7艦隊で充分」との小沢氏発言

それでは、日本は一体どういう対応をしているのか?実は、日本も急速に軍事力を増強させている。その背景にあるのが、中国の軍備拡大問題と北朝鮮の核・ミサイル開発への反発である。防衛庁を防衛省に昇格させたのは2年前のことであるが、それ以降の日本の軍事力増強の動きは急だ。

先ず、日本が力を入れているのが、MD(ミサイル防衛)体制の整備である。さらに、最新鋭イージス艦の追加実戦配備やヘリコプター搭載護衛艦やミサイル搭載潜水艦の米国からの購入など、海上戦力を大々的に拡充している。現在の海上自衛隊の実力は、世界第2位だと言われている。

一方、古くなった戦闘機250〜300機を新型戦闘機に替える次世代戦闘機計画も動き出している。狙っているのが米国最新鋭ステルス戦闘機の導入である。戦闘行動半径は1200キロもあり、朝鮮半島全域はもちろん、中国東部地域までをも作戦圏に収める戦闘機だ。下の写真がそれだ。


F22「ラプター」ステルス戦闘機( m3i.nobody.jp/military/imgより )

このようなきな臭い動きがある中で、2月24日、民主党小沢一郎代表による「米国の極東におけるプレゼンス(存在)は第7艦隊で十分だ」という爆弾発言が飛び出したのだ。筆者は、それに続く、「米国に唯々諾々と従うのではなく、私たちもきちんとした世界戦略を持ち、少なくとも日本に関係する事柄についてはもっと役割を分担すべきだ」との発言の方が重大だと思っている。


結論

小沢氏の発言は彼の持論を展開したに過ぎないが、解散総選挙が近いこの時期としては、実に重要な問題提起である。小沢氏の発言で大慌てなのは米国だけではない。中国にも大きな影響を与えたはずである。米中2大強国が並び立とうとする現在、日本の立ち位置は重要だ。

日本が米、中のどちらに肩入れするかによって、アジアの情勢は大きく変化する。日本の経済力と環境対応などの先端技術は米中双方の垂涎の的なのだ。日本の持つ「憲法9条」の平和条項と世界第二位の海軍力は、これからの時代の外交上の大きな武器になると思われる。

日本はもっと自信を持つべきである。米中を揺さぶりながら、どの国からも自立をして、世界から尊敬される国になる力を持っている。日本に足りないのは「政治のリーダーシップ」だけなのだ。一刻も早く解散総選挙を行って、堂々たる政治が展開出来る基礎を固めるべきである。


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