夏のボーナスで何を買いますか? 
−ディジタル家電のブームは起きるのか?
2005年6月11日

ボーナスを支給されない身分になって2年になろうとしている。
無くなってみて、改めてボーナスの有り難さを思い出している。
世間では、そろそろ夏のボーナスの支給額に関心が集まり出しているようである。

専門機関の調査によると、今年夏のボーナスは、一人当たり72万円を越え、前年比で5.2%増と90年以降では2番目に高い伸びになるとのこと。なかでも中国や米国への輸出が好調な鉄鋼、非鉄金属、機械などの業種は、対前年比で2ケタの伸びとなるらしい。
(労務行政研究所の調査による)

例えば、鉄鋼業の支給額は、11社平均で77万円を超え、対前年比では29.2%増という何とも羨ましい伸びを示すらしい。低迷業種の代表と言われた鉄鋼業の華々しい復活である。

新日鉄・君津工場
新日鉄・君津工場(同社のホームページから)

昨年冬のボーナスも、全業種平均で91年以来という高い伸びを示していた。
好調な企業業績の配分が、ようやく従業員にも及んで来たということであり、嬉しいニュースであり、日本の景気回復のためにも良いニュースである。

一方、「夏のボーナスをどう使いますか?」、という内容で興味深い調査結果が日経産業新聞に掲載されていた(日経産業新聞、5月27日号)。この調査は、日経産業新聞とインターネット調査大手のインフォプラント社が共同で行ったものである。

インターネットを使って、1000人のモニターから調査した結果だそうだ。
余談であるが、このようなインターネットを駆使した新しいマーケット調査手法が、マーケティングの世界では主流になりつつあるらしい。


夏のボーナスをどう使いますか?

それでは、さっそく調査結果から見てみよう。
1000人から聞いた、2005年夏のボーナスの使い道ベスト5である。

1位:「旅行・レジャー」(33.1%)
2位:「生活資金」(24.0%)
3位:「家のローン」(19.5%)
4位:「洋服」(18.1%)
5位:「子供の教育費」(15.8%)

この結果を見る限り、庶民の暮らしは相変わらず慎ましいものがある。
家のローン返済や子供の教育費に追われ、日常生活の赤字埋め合わせがボーナスの主たる使い道であることが分かる。これでは、「洋服の購入」も、奥方と子供のモノで消えてしまいそうだ。

日本経済は、いわゆる「踊り場」にあるらしく、景気動向は一進一退を繰り返している。
景気の本格的な回復は、個人消費の動向次第というのが大方の見方であるが、ボーナスの使い道を見る限り、あまり大きな期待は持てそうにない。
 
一方、今回の調査では、ボーナスで購入したいデジタル機器の人気も調べている。
この夏のボーナスでディジタル機器を買いたい、という層は全体の僅か16.5%である。
彼らの買いたい商品のベスト5を並べてみよう。

1位:「ハードディスク付きDVDレコーダー」(23.0%)
2位:「液晶テレビ」(20.6%)
3位:「ノート付きパソコン」(20.0%)
4位:「携帯音楽プレーヤー」(13.9%)
5位:「ディジタルカメラ」(11.5%)

実は、この調査結果を見て少々驚いている。
我が家でも、これから買いたいものの人気調査を行ったが、上位4つは全く同じであった。
テレビ、ビデオ、パソコン等ほとんどの家電が、購入して5年〜7年以上が経過し、そろそろ限界に達している。CDウォークマンは遂に寿命が尽き、先日買い換えたばかりである。

回りの仕事仲間や兄弟達の状況を聞いても、我が家と大同小異である。
薄型テレビもDVDプレーヤーも、持っている方が圧倒的に少ない。
ただ、これから欲しいものというと、大体我が家と同じような傾向を示している。

この市場調査でも、「実際にディジタル家電を購入する人の割合」ではなく、「ディジタル家電を購入したい人の割合」を調べると、16.5%から数字は大幅に跳ね上がるものと思われる。


海外のボーナス事情

ところで、日本では、「ボーナスは年に2回、給料の数カ月分」というのがサラリーマンの常識である。「日本の常識は、世界の非常識」と言うが、調べてみると、ボーナスの世界にもこれが当てはまるらしい。

世界の大勢は、ボーナスを支給するにしても給料の精々1カ月分であり、全く支給されない国の方が多数を占めている。例えば、米国では、すべての従業員にボーナスを支払うという制度はないとのこと。

むしろ、業績の向上に貢献した人に、その“分け前”としてボーナスを支払うのが一般的らしい。
青色ダイオードを発明し、巨額(?)のボーナスを手にした中村教授のケースを思い出して貰えば分かり易い(ただし、中村教授本人は、今回の妥結額には至って不満であるが…・・)。

ところが、アメリカには、株の配当金、というボーナスに代わる臨時収入がある(それも年2回だけでなく、年4回に分けて配当を実施する企業も多い)。
アメリカでは、個人の金融資産の40%以上が、株式や投資信託に向けられている。
これは、日本の5倍以上である。

日本の場合は、現金・預貯金の割合が約60%であり、近年の低金利により、これらの資産は全く果実(利息)を生んでいない。
このため日本では、ボーナスだけが頼り、という構図になってしまうのである。

覚えている方もおられると思うが、昨年のクリスマス前に、マイクロソフト社は、総額320億ドルにも上る株の特別配当を実施した。日本円に換算すると、約3兆3千億円である。

この配当金額がどれほど巨額か、お分かりになるだろうか?

ちなみに、日本の今年夏のボーナス支給額は、17兆8千億円である(みずほ総研調査、2005年4月1日)。この金額が、官民合わせて4000万人に支給される(1人当たり平均44万8千円)。
マイクロソフト1社の特別配当は、日本全体の夏のボーナス総額の5分の1にも達するのである。

マイクロソフトの株主は推定5万人であり、1人あたりの配当額は、平均6、600万円にも上る。
株の配当金は消費に回る傾向が強いと言われるが、これだけの配当を貰えば消費に回らない方がおかしい。

昨年暮の米国クリスマス商戦は、事前の予想に反し、極めて好調であったそうだが、その背景にはこういう事情もあったのである。


巨額な株式配当を発表するマイクロ・ソフト幹部(同社のホーム・ページから)

高い株価や株式配当が消費を刺激し、それが景気の腰折れを防ぎ、企業の収益を支える。
それがまた株価の上昇に跳ね返る、という最近の米国景気の良い循環がここには見られるのである。


結論

6月3日の日経新聞・朝刊には、ディジタル家電の値段が大幅に下がり、いわゆる「手頃な値段」になりつつある、との報道がなされていた。
来年のサッカー・ワールドカップ決勝戦を控え、ディジタル家電は高度成長期の「3C」(カー、クーラー、カラーTV)以来、実に30年ぶりの家電ブームを呼び起こすことになるのか?

値段の下がり方と消費者の嗜好を見る限り、期待が持てそうな雰囲気もある。
ただ、そのためには、「先立つもの」の存在が本当に大事である。

一方、好調な企業業績を受け、日本企業にも株の増配や復配を発表する会社が相次いでいる。今3月期の上場企業の株式配当総額は3兆円を超え、過去最高になるとのこと。
この配当金が、7〜8月にかけて、全国の株主に支払われる。

果たして、この配当金はディジタル家電等の購入に回るのだろうか?
少なくとも、我が家はDVDプレーヤーの購入を決断した。

ただ、史上空前の配当額と言っても、マイクロソフト1社の特別配当にも及ばない。

日本企業の株式配当性向(企業利益の株主への還元割合)は、米国等諸外国の約半分である。日本経済を本格的に回復させるためには、個人消費の回復が不可欠であるが、ボーナス等による従業員へ還元と併せ、株主への還元の双方で、今一歩の努力が必要である。


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